鮮やかな緑色と独特の芳香。それが春菊の魅力です。
その魅力ゆえか、春菊は鍋料理や和え物の材料として、幅広く愛されている野菜です。
供給も安定しているため気軽にお料理に使える春菊には、いったいどんな栄養が含まれているのでしょうか?
選び方や保存方法、またレシピとともに、本日は春菊について詳しく解説いたします。
春菊とは?地方によって変わる種類
そもそも、春菊とはどんな野菜なのでしょうか?
春菊の原産は、地中海沿岸といわれています。
中国を介して日本に伝わった春菊は、17世紀にはすでに食用として栽培されていた記録が残っています。
「春菊」の名前は、春に花を咲かせることに由来するという説があります。(※1)
ちなみに、日本で栽培されている春菊は、地方によって種類や名称が異なることをご存じでしょうか?
春菊には、大葉種、中葉種、小葉種があります。
春菊の特徴といえば鋸状の葉ですが、大葉種は匙形で切れ込みが浅いのが特徴。中庸種は逆に切り込みが深く、香りも濃厚です。(※2)
一般的に出回るのは香りが強い中葉種ですが、西日本では大葉種が好まれる傾向があります。(※3)
大葉種
中葉種
小葉種
春菊という名も、ところ変われば変化します。
関西では「キクナ(菊菜)」と呼ばれているほか、大葉種は場所によっては「オタフク」という愛嬌たっぷりの名で呼ばれることもあります。(※1)
春菊の栄養と効果・効能
冬の食卓を彩ってくれる緑色が好ましい春菊。実は栄養も豊富な野菜です。
春菊に含まれる栄養と、それによって期待できる効果や効能についてご紹介いたします。
春菊に含まれる主な栄養(生100g当たりの数値)(※4)
カロリー | 20 kcal |
脂質 | 0.3g |
糖質 | 0.7g |
食物繊維 | 3.2g |
カリウム | 460mg |
カルシウム | 120mg |
マグネシウム | 26mg |
鉄 | 1.7mg |
βカロテン | 4500μg |
ビタミンK | 250μg |
ビタミンB1 | 0.1mg |
ビタミンB2 | 0.16mg |
葉酸 | 190μg |
ビタミンC | 19mg |
美肌効果
文部科学省の食品成分データベースを参考に、春菊の栄養について見ていきましょう。(※4)
まず突出しているのが、春菊に含まれるβカロテンの量。生の春菊100g中には、4500μgものβカロテンが含まれているのです。
βカロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜などの上皮組織の健康を維持してくれます。(※5)
また春菊は、ビタミンCの含有量も豊富。
100g当たりの春菊には、19mgのビタミンCが存在します。
ビタミンCは、外的なストレスによるダメージから細胞を保護する働きがあり、抗酸化作用が強いビタミンとして知られています。
さらに皮膚の再生や治癒に不可欠のコラーゲンの生成には、ビタミンCの存在が欠かせません。(※6)
つまり春菊には、美肌効果をもたらす要素がふんだんに含まれている! というわけです。
高血圧の予防
生活習慣病を喚起するリスクを含む高血圧。
厚生労働省によれば、高血圧の原因にはまず食塩の摂りすぎがあげられるそうです。(※7)
体内に入った食塩の排出を助けてくれる栄養素が、カリウムですが、春菊100gには、460mgのカリウムが含まれています。
さらにマグネシウムの量にも注目してみましょう。春菊は豊富なミネラルを内包しており、マグネシウムの量も100g中26mg。マグネシウムもまた、降圧剤のような役割をすることが判明しているため(※8)、春菊の摂取は高血圧の予防につながる可能性が高いのです。
呼吸器系統の健康維持
春菊はビタミンやミネラル、またタンパク質にいたるまで、多岐にわたる栄養をバランスよく含んでいます。
とくに良質のタンパク質やカルシウム、カリウムなどの栄養は、呼吸器系等の健康維持に大きく貢献するといわれています。(※9)
また前述したβカロテンも、体内にビタミンAに変換された後、呼吸器をはじめとする器官の機能維持を助けてくれます。(※5)
咳が止まらなかったり肺や呼吸器に問題がある方は、主治医の先生と相談しつつ春菊を積極的に食生活に取り込むとよいかもしれません。
骨粗鬆症の予防
厚生労働省によれば、女性は年齢を重ねるごとに骨粗鬆症の発症率が高くなるそうです。
骨粗鬆症とは、骨の代謝バランスが崩れることにより骨が脆くなる症状を指します。
骨粗鬆症の予防に必要な栄養は、骨の形成に必須のカルシウム、カリウムや鉄などのミネラル類です。(※10)
春菊はこうしたミネラル類を豊富に含むことから、日常的に摂取することで自然に骨粗鬆症の予防につながるわけです。
貧血の予防
女性に多いといわれる病気のひとつには、貧血もあげられます。
貧血の予防には、鉄分の摂取が必要です。厚生労働省では、月経のある女性ならば1日に10.5mgの鉄分の摂取が望ましいとしています。(※11)
鉄分は代謝によって失われていく栄養であるため、食生活から確実に補給していく必要があります。
春菊100g中に含まれる鉄の量は1.7mgほど。1日の鉄分推奨量に寄与してくれる数字です。
実際に厚生省の貧血に関するサイトでも、春菊の摂取が奨励されているのです。(※11)
胃腸の健康を守る
春菊には、独特の芳香があります。
この香りの成分は自律神経に良い影響をもたらし、胃腸の具合を整えたり、食欲増進の効果があるといわれています。(※3)
ストレスを感じる場合は、春菊を摂取すると気分が落ち着くかもしれませんね。
妊婦さんが春菊を摂取するメリット
貧血は女性に多い病気であることは前述しましたが、その予防のために摂取する鉄分は、妊婦さんや産後の女性にはさらに重要な役割を果たす栄養なのです。
妊娠中や授乳期の体には、母体や胎児の健康のためにより多くの鉄分が求められます。
さらに、ビタミンやミネラルの栄養素も、母体の健康や授乳期の体の補強のために摂取は必須。(※11)
その観点から見れば、鉄分をはじめとするミネラルや、βカロテンをはじめとするビタミンが豊富な春菊は、妊娠中及び授乳中の女性には大いにメリットがある野菜といえるでしょう。
春菊の旬の時期は?
名前から春を連想する春菊ですが、旬はいつなのでしょうか?
JAのサイトを参考にすると、春菊の出荷量が増えるのは11月から2月。最盛期は12月から1月で、まさに寒い時期に美味しくなる野菜なのです。(※3)
葉物野菜であるため保存性が低い春菊は、主要な産地が大都市近郊に集中しています。(※2)
現在、春菊の出荷量が多い都道府県としては、千葉県、栃木県、群馬県、茨城県などなど。
関東近県で栽培が盛んであることがわかります。
おいしい春菊の選び方
葉物野菜の春菊は、鮮度が美味しさを支えています。
スーパーでも手軽に入手できる春菊ですが、購入するにあたってどんな点に留意すべきなのでしょうか?
美味しい春菊の選び方について、コツを解説いたします。
色
春菊を選ぶ場合、注目すべきはまず色です。
鮮やかな緑色が特徴の春菊、葉の先までみずみずしい色合いのものを選びましょう。
鮮度が落ちた春菊は、水分を失って黄色くなっていたり、枯れて茶色っぽくなっていたりします。こうした春菊は選ばないようにしましょう。(※3・12)
形
葉が密生しているため茎が見にくい春菊ですが、美味しい春菊を選ぶには茎の部分も観察してみましょう。
太すぎる茎は固く、食感があまりよくありません。
葉の食感とのバランスを考え、細めの茎の春菊を選んでみましょう。食べるときに均一の柔らかさを実感できます。
また、切り口が乾燥しすぎている春菊は鮮度が落ちている可能性があります。切り口に水分を含んでいるものがベターです。(※3・12)
春菊を生食したい場合には、葉が小さく切れ込みが浅い小葉種がおすすめです。(※13)
触感
春菊を手に取ってみましょう。
葉や茎の部分が固いと感じたら、その春菊は選ばないほうが無難です。
茎の部分は特に、指でポキっと折れるくらいの柔らかさが理想的。また水分をたくさん含んでみずみずしい春菊は、手に取ったときに重々しさがあります。(※12・13)
触感も駆使して、美味しい春菊を選んでみてください。
春菊の栄養を効果的に摂る食べ方とは
春菊には、特に女性の健康のために有効な栄養がたくさん含まれていることがわかっていただけたと思います。
こうした栄養をより効果的に摂取するには、どのような食べ方が望ましいのでしょうか?
美味しく効果的に春菊を食べるための極意を解説いたします。(※14)
油を使用する
春菊はおひたしや鍋に入れることが多い野菜ですが、油で炒めると栄養面におけるメリットがあります。
春菊に豊富に含まれるβカロテンは、脂溶性のビタミン。そのため、油と調理することでより効率よくビタミンAを摂取できるのです。また春菊にはビタミンKも含まれていますが、こちらも脂溶性です。
ぜひ油炒めなどの調理法で、春菊の栄養を無駄なく摂取しましょう。
生で食べる
葉が柔らかな春菊は、生食も可能。ほどよい苦味が、病みつきになる美味しさです。
サラダとして春菊を食べる場合は、水溶性のビタミンCやビタミンB群を、調理によって損なうことなく摂取できます。
旬の時期、香りのよい柔らかな春菊を、生で食べてその美味しさを堪能してみてください。
茹でる
春菊は茹でて食べることが多い野菜ですが、茹でることで流出してしまう栄養素が有ります。 それはどのようにして体に取り込めることができるでしょうか?
水分に流れてしまうビタミン類は、スープなどにすることで失うことなく摂取できます。あっさりと美味しいスープにして、栄養ごと飲んでしまいましょう。
食べ方次第で、茹でた春菊の栄養も効果的に取り入れることが可能なのです。
春菊の下ごしらえのコツとは?
春菊を食べるにあたり、どんな下ごしらえをしていますか?
春菊を美味しく食べるために、ぜひ以下のような適切な下ごしらえをしてみてください。(※12)
みずみずしさを取り戻すために、春菊は調理の前に水に浸けておく
葉の部分と茎の部分を分けて、それぞれに合う料理を決め、カットする
葉の部分は、柔らかければサラダやナムルにできます。
もちろん、春菊料理の定番の和え物や鍋物にもうってつけ。適切な大きさにカットして、炒めものにしたりかき揚げにするのも便利です。
細かくカットした春菊の葉は、パスタやスープに具材として使えます。
茎の部分はどうでしょうか?
歯ごたえのよい春菊の茎は、長めにカットしたものは炒めものに向いています。
小さく切った茎は、スープやチャーハンなどの具材にぜひ。
春菊を使用したおすすめ料理とレシピ
春菊の胡麻和え
材 料:
春 菊 1袋(100g)
青い海 沖縄の海水塩 少々
いりごま(白) 大さじ1
有機醤油うすくち特選 小さじ1
てんさい含蜜糖 小さじ1/2
作り方:
春菊は特に根本の部分をよく洗っておく
鍋にお湯をわかしたら海水塩を入れ、1分ほどゆでる
ザルに上げ、粗熱が取れたら軽く絞って5㎝の長さに切る
すり鉢に白ごまを入れて半分ほど粒が残るくらいにする
有機醤油うすくち特選とてんさい含蜜糖を加え、しっかり混ぜる
5に春菊を加え、箸や手でほぐしながら和える
春菊のナムル
※写真はニラを使用しています
材料:
春 菊 1束(100g)
青い海 沖縄の海水塩 少々
有機醤油うすくち特選 小さじ1
胡麻油 … 小さじ1
いりごま(白) … 小さじ1
作り方:
春菊は特に根本の部分をよく洗っておく
鍋にお湯をわかしたら海水塩を入れ、2分ほど柔らかくなるまでゆでる
ザルに上げ、粗熱が取れたら軽く絞って5㎝の長さに切る
ボウルに有機醤油うすくち特選と胡麻油を入れてしっかり混ぜる
4に春菊を加え、箸や手でほぐしながら和える
器に盛ったらいりごまで飾り付けをする
春菊の天ぷら
材料:
春 菊 1/2束(20g)
玄米粉 120g
水 120cc
なたねサラダ油 適量
作り方:
春菊は特に根本の部分をよく洗っておく
1をザルに上げ、布巾で水気をよくとっておく
玄米子をボウルに入れ水注ぎ、菜ばしでよく混ぜておく
鍋になたねサラダ油を入れ火にかける
菜ばしに衣をつけ、油のなかに落としてみて、底まで落ちた衣がすぐに浮かんでくるくらいまで温度を上げる
春菊の根元を持ち、衣を全体につけます。ボウルのフチで余分な衣を落とす
根元は持ったまま葉先だけを鍋に入れ、5~10秒程度待つ
葉先を左右に軽く振って葉をひろげるようにする
ぱちぱちと頻繁になっていた音が少なくなり、箸でつついたときにかたさが伝わってくるくらいまで揚げまる。
新聞紙やキッチンペーパーにのせ、油をしっかり切ったら出来上がり
春菊の正しい保存方法とは?どれくらい持つ?
葉物野菜の常で、春菊の保存性は決して高くありません。しかし工夫によっては長期の保存も可能です。冷凍と冷蔵、それぞれの保存方法と保存期間をご紹介します。
冷凍
意外と思われるかもしれませんが、春菊は冷凍保存向きの野菜です。
すぐに消費しきれない春菊は、ぜひ冷凍して鮮度と美味しさを保持するようにしましょう。
春菊の冷凍保存は、生のものと茹でたもの、いずれのタイプも可能です。
・生の春菊の冷凍方法
生の春菊をよく洗い、水分はキッチンペーパーを使ってしっかりと取り除きます。葉の部分と茎の部分を分けてカットし、食べやすい大きさにしておきましょう。カットした春菊は、冷凍保存用の袋に入れ、空気を抜いた状態で冷凍庫に入れます。
この状態で最大1か月保存ができます。
冷凍した春菊は、解凍しないまま鍋、炒めものに使用可能です。(※15)
・茹でた春菊の冷凍方法
茹でた春菊は、1回使い切りの量に分けてラップに包みます。さらに冷凍保存用の袋に入れて、冷凍庫に保存。
1か月をめどに使い切るようにしましょう。(※12)
野菜室
買ってきた春菊は、まず野菜室に保管すると思いますが、この場合も鮮度を保つコツがあります。
春菊の葉の部分が乾燥してしまわないよう、新聞紙や少し湿らせたキッチンペーパーで葉先まで包み、さらにビニール袋に入れます。
可能ならば、野菜室内で根の部分が下になるよう立てておくと、より長持ちします。(※3)
茹でた春菊を冷蔵保存する場合には、固めに茹でるのが美味しさを保つコツです。
水気を切り、密封容器に入れて冷蔵庫に保存。
2日をめどに食べきるのが基本です。
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まとめ
春菊の美しい緑色を、食卓の彩りとして用いる方は多いことでしょう。
その春菊、実は想像以上に多くの栄養を含んでいます。
特に、女性の健康や美容に有効なビタミンやミネラルが豊富。春菊の種類の特徴や、葉や茎の食感を生かして調理法を変化させれば、バリエーション豊かに春菊の美味しさを楽しめます。
春菊が持つさまざまな栄養やそれによって期待できる効能、無駄にする手はありません。
鮮度のよい春菊を選び、ぜひ積極的に献立に取り入れてみてください。
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<引用元>
※1.小学館日本大百科全書(シュンギク)
※2.平凡社世界大百科事典(シュンギク)
※3.JAグループ「シュンギク」
※4.文部科学省「食品成分データベース(しゅんぎく)」
※5.小学館日本大百科全書(ビタミン)
※6.厚生労働省「ビタミンC」
※7.厚生労働省「高血圧」
※8.大正製薬株式会社「血圧を下げる食べ物・上げる食べ物とは?おすすめレシピも紹介」
※9.NPO法人 日本呼吸器障害者情報センター「栄養療法」
※10.厚生労働省「骨粗鬆症」
※11.厚生労働省「貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
※12.カゴメ株式会社「[春菊]栄養や選び方、冷蔵&冷凍保存、下ごしらえなどまとめ」
※13.キューピー株式会社「春菊の選び方」
※14.株式会社にんべん「春菊は栄養が豊富?加熱しても良い?選び方や調理・保存方法も紹介」https://shop.ninben.co.jp/blog/?p=4595
※15.株式会社ニチレイ「【春菊の保存】生のまま冷凍が便利! 1ヵ月長持ちするテクニック!」
https://www.nichireifoods.co.jp/media/15144/
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